クラウド会計のメリットとデメリット
近年普及してきたクラウド会計のメリットとデメリットを比較してみたいと思います。
クラウド会計のメリット
①アップデートが不要
クラウド型の会計ソフトでは、機能の追加や法令改正への対応などを行うアップデートは自動で行われるため、常に最新の状態で利用することが可能です。
インストール型の会計ソフトの場合、不具合の修正等でアップデートがある場合、アップデート待ちの時間が生じることもあります。
②様々な端末から利用することができる
インストール型の会計ソフトは、Windowsには対応していても、Mac OSには対応していないことも多いです。
クラウド型会計ソフトはネット環境があれば利用できるので、Mac OSでも利用できます。
パソコン以外にもタブレットやスマホなどからも利用できます。
③データ連携ができる
銀行口座やクレジットカードの利用履歴のデータを連携させることで、会計入力が格段に楽になります。
現金で支払った領収書もスマホアプリから写真で取り込むことでデータ可することもできます。
また、AIによる自動学習機能もあり、過去に入力した情報から学習して、最適な勘定科目を提案してくれるので、仕訳もスムーズに登録することができます。
④バックアップが不要
インストール型の会計ソフトでは、データ紛失に備えて外部にバックアップを取る必要があります。
クラウド会計ソフトでは、データは自動的にクラウドサーバーに保管されるため、バックアップ作業は不要です。
また、インストール型の会計ソフトではPC等のハードウェアの故障によりデータ消失のリスクがありますが、クラウド会計ソフトの場合には、そのリスクはありません。
インストール型の会計ソフトで会計ソフトメーカーが提供するクラウドストレージに保存するという方法もありますが、クラウドストレージの利用は基本的に別途利用料が必要となります。
⑤税理士との連携が楽になる
クラウド会計ソフトの場合は、ネット上でデータを税理士と共有することが可能ですので、会計データをメールに添付してやり取りをする手間はなくなります。
(インストール型の会計ソフトでも、クラウドサービス上に会計データを保存して共有することは可能ですが、特定のクラウドサービスの利用が必要となります。)
⑥一括変換や重複仕訳のチェック機能がある
クラウド会計ソフトでは、検索した仕訳の中から複数を選択して一括で勘定科目等を変換することができます。
インストール型の会計ソフトでは検索条件に一致したものを一括で変換することはできますが、検索結果の中から任意に選択して変換することはできません。
クラウド会計ソフトには、仕訳の重複チェック機能があります。
freeeでは重複チェックにかかりやすい振込手数料を「手数料を重複チェックの対象から除外する」ことも可能です。
クラウド会計のデメリット
①ランニングコストがかかる
クラウド会計ソフトは買取型ではなく、サブスクリプション方式であることが基本であるため、毎月の利用料金がかかります。
②ネット環境が必要
クラウド会計ソフトは、インターネット接続が必要となりますので、ネット環境がないと使えません。
ネットの通信速度によってはページの切換えに時間がかかることもあり、作業に影響することもあります。
③セキュリティの問題
クラウド会計ソフトは、アカウントにログインして会計入力などを行います。
会計ソフト側では、セキュリティの強化に日々努めているため、情報の流出などの恐れはほとんどありませんが、ID・パスワードの流出によるリスクが完全にないとはいえません。
④入力間違いをすることもある
クラウド会計ソフトは操作が簡単な分、確認を怠って登録ボタンを押してしまうと誤った仕訳が登録されてしまう可能性があります。
また、自動学習機能もある為、誤った仕訳をルールとして学習してしまうということも起こり得ます。
⑤アップデートにより仕様が変更されることもある
アップデートやリニューアルにより、ユーザーインターフェースが変更となることもあります。
今までの慣れ親しんだ画面から操作が変わることもありますので、慣れるまでは戸惑うこともあるかもしれません。
⑥対応できる税理士が少ない
クラウド会計ソフトは、新しいサービスのため、まだまだ使い慣れたインストール型の会計ソフトを使っている税理士が多く、対応できる税理士が少ないというのが現状です。
クラウド会計ソフトへの変更を検討する際は、必ず顧問税理士に相談するようにしてください。
なかにはクラウド会計ソフトへの移行を敬遠する税理士もいます。
クラウド会計に対応できる税理士≒ITリテラシーの高い税理士、であることが多いので、見識を広めるために税理士を変更してみるのもアリだと思います。
クラウド会計対応の税理士の探し方は前回の記事を参照してください。
https://kurojika-cloud.com/preparation/194/
インストール型会計ソフトのメリット
①ソフト料金が買い切りである
クラウド会計ソフトのようにサブスクリプション方式ではないため、一度購入すれば数年使える可能性があります。(消費税率の変更等の大きな税制改正がなければ)
大きな改正は頻繁にはありませんので、数年間で見れば、クラウド会計ソフトよりも費用は安くなることが多いと言えます。
②カスタマイズが容易
クラウド会計ソフトに比べて、比較的ユーザーがカスタマイズしやすいと言えます。
勘定科目のデータを単事業年度で持つため、追加や削除がしやすいです。
③複数データが作成可能
インストール型会計ソフトの場合、予測データを入力して、「予測用データ」と「現状のデータ」と複数作成することが可能ですが、クラウド会計ソフトの場合はデータが1つしかないため、そういった処理はできません。
クラウド会計ソフトのデータが1つ、というのはメリットでもありますが、融通が利かないという点ではデメリットにもなり得ます。
④手入力は早い
クラウド会計ソフトは自動登録をメインに設計されているため、手動で入力する速度はインストール型の会計ソフトに軍配が上がります。
⑤財務分析の機能が充実している
財務分析の機能はインストール型会計ソフトの方が充実しています。
5期比較等、複数年での比較を見たり財務指標の把握がしやすい点において優れています。
クラウド会計ソフトで出力できる帳票はシンプルなものが多く、現段階ではあまり多くの財務分析資料は作成できません。
⑥手形管理などの管理機能がある
会計ソフト内で手形の管理ができるなど、会計以外の機能も充実していることが多いです。
クラウド会計が向いているパターン
①社内のITリテラシーが高い
社内のITリテラシーが高く、ITツールの導入に抵抗が低い場合はクラウド会計の導入がしやすいです。
社内のデータをアナログでなく、デジタル管理している場合は会計ソフトとの連携も容易になります。
②ECサイトでの売上がある企業
ECサイトのアカウントとクラウド会計ソフトを連携することが可能です。
主なところでは、AmazonやYahoo!ショッピングの出品者アカウント、BASEといったところが対応しています。
また、顧客からの直接の振込みが多い場合も、一定範囲の金額の入金=売上、といった仕訳ルールを設定しておけば多数の処理も一括で行うことが可能となり、非常に効率的です。
③簿記の知識が無い
クラウド会計ソフトでの自動仕訳の入力(登録)は、会計ソフトを入力しているという感覚は少ないので、簿記の知識のない方でも簡単に可能です。
売掛金の発生仕訳も、シリーズの請求書ソフトから連動させることで登録が可能です。
クラウド会計が向かないパターン
①現行のソフトを十分に使いこなしている
現在使っているインストール型会計ソフトの機能を使いこなせている場合であれば、わざわざ変更する必要はないかもしれません。
②年間の取引量(仕訳量)が少ない
そもそもの年間取引量が少ない場合、クラウド会計によるメリットを十分に享受できないこともあります。
ネットバンキングにも月額の利用料がかかりますので、取引量が少ないのであればインストール型の会計ソフトで手入力をする方が費用対効果で良い場合もあります。
③現金での取引が多い
現金取引が多い場合は、インストール型の会計ソフトで手入力をする方が早いことが多いです。
以上のようにクラウド会計のメリットとデメリットをまとめましたが、現在はクラウド会計が向かないパターンに該当していても、業務フローの見直しやDX化によってクラウド会計の導入ができるようになることもあります。
現金取引が多いから、ネットバンキングをしていないから、といってクラウド会計に向いていないと思い込むのではなく、効率化できる方法を一度模索してみるのも良いかもしれませんね。